安心安全なパンとは|天然酵母、トランス脂肪酸。安心安全なパンには欠かせない大切な要素があります。ここではその大切な要素についてご説明します。 アレルギー表示

食物アレルギーについて

 平成13年4月に食品衛生法関連法令の改正が行われ、アレルギー症状を引き起こす原材料を含む加工食品には、その旨を表示する制度が省令により始まりました(本格的なスタートは平成14年4月)。そのため、アレルギー体質の人が食品を選ぶ際に、表示を参考にアレルギー症状が現れる食品を避けることができるようになりました。

1.食物アレルギーとは

 「食物アレルギー」を持つ人が食物に含まれる原因物質(アレルゲン:主としてたんぱく質)を食べた時に、身体が異物として認識し、防御するために過敏な反応を起こすことです。主な症状は、「皮膚がかゆくなる」、「じん麻疹がでる」、「せきがでる」等、皮膚症状あるいは呼吸器症状等があります。重い症状(アナフィラキシーショック)の場合には、「意識がなくなる」、「血圧が低下してショック状態になる」ということもあり、非常に危険な場合もあります。

2.表示の対象となるもの

 平成25年9月には、カシューナッツ、及びごまの2品目が特定原材料に準ずるものに追加され、現在、特定原材料は7品目、特定原材料に準ずるものは20品目となっています。(表1)。また、以前はそれぞれ独立した消費者庁通知であった「アレルゲンを含む食品に関する表示」は、平成27年3月30日「食品表示基準について」(消費者庁次長通知 消食表第139号)以降は「アレルギー物質」という用語が食品表示法及び関連する府令・通知等では「アレルゲン」という用語に変更・統一されました。

表1 表示されるアレルゲン対象品目

用 語 特定原材料等の名称 表示の義務
特定原材料(7品目) 卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに 表示義務
特定原材料に準ずるもの
(20品目)
いくら、キウイフルーツ、くるみ、 大豆、
カシューナッツ、バナナ、 やまいも、もも、
りんご、さば、ごま、さけ、いか、鶏肉、ゼラチン、
豚肉、オレンジ、牛肉、あわび、まつたけ
表示を奨励
(任意表示)

※特定原材料等の名称は、平成26-27年全国実態調査における発症数の多い順に記載



「特定原材料」となる7品目については、微量でも成分が含まれている場合、必ず食品のパッケージに食物アレルギーの原因となる食品の名称を表示しなければなりません。また、特定原材料に準ずるもの(20品目)を食品に使用した場合には、できるだけ食品のパッケージに、これらの名称を表示するよう努めることとされています。 ただし、店頭で量り売りされる惣菜、パン、注文を受けてから作られるお弁当、飲食店のメニュー、あるいはお品書き等については、表示されていない場合もあるので、注意しなければなりません。一部のパン屋さんでは、図1のように店頭で商品につけているプライスカードにアレルゲン表示をして、消費者が確認できるようにしています。

ロールパン
○○円

アレルゲン表示 小麦 落花生 えび かに そば
       

図1 プライスカードでのアレルゲン表示例



3.表示方法(個別表示)

 原則、個々の原材料名の直後に括弧を付けて、特定原材料等を含む旨を表示する。添加物については,物質名の直後に括弧を付けて特定原材料等に由来する旨を表示する。(個別表示)
 「乳」については、「乳成分を含む」と表示する。添加物の場合は、「乳成分由来」ではなく、「乳由来」と表示する。
 複数の特定原材料等を含んでいる場合は、それぞれの特定原材料等を「・」でつないで表示する。
 拡大表記のうち、卵の「卵白」、「卵黄」は廃止
 特定加工食品及びその拡大表記を廃止


名称 調理パン
原材料名 パン(小麦・大豆・乳成分を含む)サラダ(大豆を含む)
レタス/乳化剤(大豆由来),イーストフード,
調味料(アミノ酸等),カゼインNa(乳由来),V.C


4.表示方法(一括表示)

 表示面積に限りがあり、一括表示でないと表示が困難な場合等、例外的に「一括表示」を可能とする。
 原材料や代替表記等で表示されているものも含め、含まれる全ての特定原材料等について、原材料名欄の最後(添加物の事項欄を設けている場合は、原材料名欄の最後と添加物欄の最後)に「(一部に〇〇・〇〇・…を 含む)」と表示する。


名称 調理パン
原材料名 パンサラダ,レタス/乳化剤,イーストフード,
調味料(アミノ酸等),カゼインNa,V.C,
(一部に小麦・卵・大豆・乳成分を含む)

新ルールに基づく表示のための猶予期間は 平成32年3月31日 までです。
この期間内に新ルールに基づく食品表示に切り替える必要があります。



5.特定加工食品の廃止

 新しい食品表示基準では、特定加工食品については廃止されました。これは、食物アレルゲン対応食として卵を含まないマヨネーズ様の製品や小麦を含まないパン等の開発・製品化が進んだことから、特に子供の患者の場合等、当該 食品がアルゲンを含んでいるかどうかの判断ができずに誤食の事例が発生するようになったためである。そのため、現在は代替表記のみが表示方法として認められています。



6.コンタミネーションの注意喚起について

 製品にはアレルゲンを含む食材を使用していなくても、同じ製造ラインで生産している他の製品での使用がある等して、アレルゲンを含む原材料が混入(コンタミネーション)する場合があります。
 食物アレルギーは極微量のアレルゲンによっても発症することがあるため、コンタミネーションが考えられる場合、原材料等の欄外に「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています。」のような注意喚起が望ましいです。なお、わが国では、海外とは異なり、「入っているかもしれません(May contain)」という表記方法は禁止されています。



7.参考資料

安達玲子: 「アレルゲンを含む食品の表示のポイントと検査法」
製パン技術資料No817 (平成27年11月)、一般社団法人日本パン技術研究所
齋藤紀子: 「食品表示基準に基づく加工食品の表示について」
製パン技術資料No846(平成30年4月)、一般社団法人日本パン技術研究所
消費者庁HP: アレルギー表示に関する情報、早わかり食品表示ガイド、
知っておきたい食品の表示

2018年11月