安心安全なパンとは|天然酵母、トランス脂肪酸。安心安全なパンには欠かせない大切な要素があります。ここではその大切な要素についてご説明します。 パン原料における小麦粉以外の穀類割合

全粒粉パン、ライ麦パンにおける小麦粉以外の穀類比率表示

 近年、消費者の健康志向などを背景に、スーパーマーケットのパン売場では『全粒粉パン』、『ライ麦食パン』が販売されています。これらのパンは日本人の嗜好に合わせた全粒粉あるいはライ麦粉の配合割合で作られることが多いため、小麦粉以外の配合割合は少ない傾向にあります。また、実際にどのくらいの全粒粉あるいはライ麦粉が配合しているのか分からないことが多いです。

●ライ麦粉、全粒粉はヘルシー志向食材

 ライ麦粉、全粒粉は食物繊維、ビタミン・ミネラルが豊富に含まれています。そのため、日本人に最も馴染みのある白い食パンより、茶褐色のライ麦粉、全粒粉を使ったパンの方が栄養価は高くなります。

写真:小麦強力粉(左下) 全粒粉(右下) ライ麦粉(上)

小麦強力粉|全粒粉|ライ麦粉

●全粒粉ってどんなもの?

 全粒粉は、一般的に小麦全粒粉のことを意味していており小麦を構成しているふすま、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものです。日本人に馴染みのある食パンに使われている小麦粉はふすま、胚芽を取り除いた胚乳の部分になります。
 小麦のふすま、胚芽の部分には食物繊維、ビタミンB1などが多く含まれています。そのため、小麦は精製することで小麦全粒粉の栄養素は1/3から1/4のビタミン・ミネラルが大幅に減少しています(図1)。

図1 精製小麦粉の栄養素の残存率(%)

精製小麦粉の栄養素の残存率

☆余談☆ アメリカではホールグレイン(全粒穀物)
 全粒穀物に含まれる食物繊維をたくさん摂ることは、腸の働きが良くし、心臓病、大腸がんのリスクを下げるとされています。このように、全粒穀物と健康との関係がアメリカでの疫学調査で報告されていることから、アメリカ政府が発表した「2005年版アメリカ人のための食生活指針」では、具体的な量として 1日あたり全粒穀物を3オンス(85g)以上摂ることを推奨されました。そのため、市販のパン製品には「100% whole wheat bread (100%全粒粉のパン)」などの商品名を使えるようにしています。

 現時点では、日本の製パン業界において小麦粉以外の穀類の使用割合についての表示方法に規定はありません。全粒粉、ライ麦粉を配合することで食物繊維、ビタミンなどの含有量を栄養成分に追記されている場合もあります。

●『ライ麦食パン』に含まれるライ麦粉の配合割合(表示例)

 日本で販売されているライ麦パン、全粒粉パンは、パンにライ麦粉、小麦全粒粉の配合割合が占めるほどふすま臭などの独特の香り、風味、食感などの個性が強くなるため、日本人の嗜好性に合わせてライ麦粉あるいは全粒粉の配合割合が20%前後のものが一般的です。

 ライ麦パン(A)は“小麦粉70%、ライ麦30%使用”、ライ麦パン(B)は“やわらかくしたライ麦を小麦粉に対して40%配合”を例に、小麦粉以外の穀類の配合比率の一般的な表示について説明します。

←左の写真:ライ麦パン(A)
小麦粉70%、ライ麦粉30%配合したパン
←右の写真:ライ麦パン(B)
やわらかくしたライ麦を小麦粉に対して40%配合したパン

 この配合割合の数字だけで比較するとライ麦パン(B)の方がライ麦を多く含んでいるような印象を受けますが、ライ麦比率を比較すると(A)の方が多いです。
 “やわらかくしたライ麦40%”の数字の中にはライ麦粒を煮る工程の水分(ライ麦の約1.4 倍)も含まれています。ライ麦粒を前処理する前(乾燥)の状態で配合比率を計算すると“小麦粉85.5%、ライ麦14.5%”になります。
 また、ライ麦パン(A)と(B)の栄養成分を比較すると、図2に示すようにライ麦パン(A)のライ麦30%を配合しているパンの方が食物繊維を多く含まれています。

図2 ライ麦パン(A)(B)の栄養成分(6枚切り食パン:1枚あたり)

ライ麦パン(A)

栄養成分表示
エネルギー 161kcal
たんぱく質 4.3g
脂質 2.2g
炭水化物 29.9g
ナトリウム 300mg
---------------------------
食物繊維 2.3g

ライ麦パン(B)

栄養成分表示
エネルギー 152kcal
たんぱく質 4.5g
脂質 1.9g
炭水化物 28.0g
ナトリウム 246mg
---------------------------
食物繊維 1.6g

※日本食品標準成分表から算出した値

 以上の事から、全粒粉パン、ライ麦パンのように複数の穀類(穀類粒も含む)を使用した製品では、小麦粉+他の穀類(穀類粒も含む)=100%とした表示が好ましいです。このように表示されることで、パンを購入する際に全粒粉、ライ麦粉の割合がどのくらいか、を簡単に知ることができます。

 一部のベーカリーでは図3 に示すように、商品のプライスカードに“ライ麦20%”というように表示されています。この“ライ麦20%”というのは『小麦粉80%、ライ麦粉20%』で作られたパンということになります。

図3 プライスカード(例)

ライブレッド
(ライ麦20%)
○○○円